合同会社が従業員を雇うとき。会社設立後の労働保険と雇用保険を解説
合同会社commit 合同会社FIELD共同編集部が編集しています。合同会社FIELDの関連会社である会計事務所および税理士法人と内容を確認しながら執筆しました。金額や期限は執筆時点のものです。

この解説は、合同会社の会社設立を済ませて、これから人を雇おうとしている人に向けています。社会保険の手続きは年金事務所でしたが、労働保険と雇用保険は別の窓口です。何をどこに出すのか、代表社員自身は対象になるのかといった点を整理しました。一人で始めた人が、初めて人を雇う段階で読む想定で書いています。
人を雇うと増える手続きの全体像を解説する

【ここでわかること】
労働基準監督署とハローワーク。窓口が2つ増えます。
合同会社の会社設立の時点では、代表社員一人なら年金事務所の手続きだけで済みました。人を雇うと、これに労働保険の手続きが加わります。
労働保険は、労災保険と雇用保険をあわせた呼び方です。労災保険は労働基準監督署、雇用保険はハローワークが窓口になります。それぞれ別の届出が必要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 労災保険 | 業務中や通勤中のけがや病気に備える制度です。保険料は全額会社が負担します。労働者を一人でも雇えば適用されます。 |
| 雇用保険 | 失業したときの給付などのための制度です。保険料は会社と労働者で負担します。加入には労働時間などの要件があります。 |
| 健康保険・厚生年金 | すでに会社設立の時点で加入しています。雇った人についても資格取得届が必要です。 |
| 所得税の源泉徴収 | 給与から所得税を差し引いて納めます。すでに役員報酬で始めているはずです。 |
会社設立の時点では意識しなくてよかった制度が、人を雇うことで一気に関係してきます。合同会社の会社設立をして一人で回してきた人にとっては、ここが最初の大きな段差になります。とはいえ、一度手続きをすれば流れは分かります。最初の一人のときだけ丁寧に進めれば、二人目からは同じことの繰り返しです。
つまり、人を一人雇うと、年金事務所・労働基準監督署・ハローワーク・税務署の4か所に関わることになります。窓口ごとに様式も期限も違うので、雇う前に一覧を作っておくと抜けがありません。
代表社員自身は労働保険の対象外
合同会社の代表社員は、事業主であって労働者ではありません。したがって、労災保険にも雇用保険にも原則として入れません。健康保険と厚生年金には入るので、この違いが混同されやすいところです。会社設立の直後に自分がどの制度の対象なのかを整理しておくと、人を雇うときにも迷いません。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(一次情報):厚生労働省|労働保険の成立手続/厚生労働省
労災保険の手続きを、会社設立後の実務として解説する

【ここでわかること】
労働基準監督署へ。保険関係成立届を10日以内に出します。
労災保険は、労働者を一人でも雇えば適用されます。パートやアルバイトも対象です。
手続きは、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署で行います。保険関係が成立した日から10日以内に、保険関係成立届を提出することとされています。
| # | やること | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 保険関係成立届 | 労働者を雇って保険関係が成立したことを届け出ます。所轄の労働基準監督署へ、成立した日から10日以内に提出します。 |
| 2 | 労働保険概算保険料申告書 | その年度の保険料を概算で申告し、納付します。成立した日から50日以内が期限とされています。 |
| 3 | 添付書類 | 登記事項証明書などを求められることがあります。事前に確認してください。 |
| 4 | 年度更新 | 毎年、前年度の保険料を確定させ、新年度の概算保険料を申告します。 |
労災保険の保険料は、全額が会社の負担です。労働者から徴収することはできません。保険料率は事業の種類によって決まっていて、危険度の高い業種ほど高くなります。

| STEP | やること | 内容 |
|---|---|---|
| STEP 1 | 労働基準監督署へ | 保険関係成立届と概算保険料申告書 |
| STEP 2 | ハローワークへ | 適用事業所設置届と資格取得届 |
| STEP 3 | 年金事務所へ | 健康保険・厚生年金の資格取得届 |
※金額と期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。最新の取扱いは所管官庁でご確認ください。
労災保険は、加入していなくても労働者が保護される仕組みになっています。ただし未加入のまま労災が起きた場合、給付にかかった費用の一部を会社が負担することになります。合同会社の会社設立をして人を雇うなら、必ず手続きしてください。
アルバイト1人でも対象になる
労災保険は、労働時間の長短にかかわらず、労働者を雇えば適用されます。短時間のアルバイトでも例外ではありません。「うちは正社員がいないから関係ない」と考えて手続きを怠ると、事故が起きたときに大きな負担を負うことになります。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(一次情報):厚生労働省|労働保険の成立手続/厚生労働省
雇用保険の手続きを、会社設立後の実務として解説する

【ここでわかること】
ハローワークへ。設置届と資格取得届を出します。
雇用保険は、失業したときの給付や、教育訓練の給付などのための制度です。ハローワークが窓口になります。
加入の対象になるのは、一定の要件を満たす労働者です。週の所定労働時間や雇用の見込み期間によって判断されます。要件は改正されることがあるので、厚生労働省やハローワークの案内で最新の内容を確認してください。
| 雇用保険適用事業所設置届 | 事業所として雇用保険の適用を受けることを届け出ます。設置した日の翌日から起算して10日以内に提出します。 |
|---|---|
| 雇用保険被保険者資格取得届 | 加入する人ごとに提出します。資格を取得した日の属する月の翌月10日までが期限です。 |
| 添付書類 | 労働保険関係成立届の控え、登記事項証明書、賃金台帳、労働者名簿、出勤簿などを求められることがあります。 |
雇用保険の保険料は、会社と労働者の双方が負担します。負担の割合は決まっていて、会社のほうが多くなっています。保険料率は事業の種類によって異なります。
手続きの順番としては、先に労働基準監督署で保険関係成立届を出し、その控えを持ってハローワークへ行くという流れになります。ハローワークの手続きで労働保険番号が必要になるためです。会社設立の後に初めて人を雇うときは、この順番を守ってください。
なお、代表社員は雇用保険に入れません。事業主であって労働者ではないためです。したがって、失業給付を受けることもできません。会社を辞める、事業をやめるといった場面での備えは、別の形で考える必要があります。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(解説):社労士クラウド|合同会社が従業員を雇ったら必要になる手続き/社労士クラウド
雇った人の社会保険の手続きを解説する

【ここでわかること】
年金事務所にも資格取得届を出します。5日以内です。
健康保険と厚生年金についても、雇った人の手続きが必要です。年金事務所へ被保険者資格取得届を提出します。
期限は、雇用した日から5日以内とされています。会社設立のときに新規適用届を出した期限と同じ考え方です。
加入の対象になるかどうかは、労働時間や労働日数によって判断されます。所定労働時間や所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上であれば被保険者になります。それ未満でも、一定の要件を満たす場合には被保険者になることがあります。

| 届出 | 期限 | 提出先 |
|---|---|---|
| 保険関係成立届 | 成立から10日以内 | 労働基準監督署 |
| 労働保険概算保険料申告書 | 成立から50日以内 | 労働基準監督署など |
| 雇用保険適用事業所設置届 | 設置の翌日から10日以内 | ハローワーク |
| 被保険者資格取得届(社会保険) | 雇用から5日以内 | 年金事務所 |
※金額と期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。最新の取扱いは所管官庁でご確認ください。
会社設立のときに自分ひとり分の資格取得届を出した経験があれば、雇った人の分も同じ様式で書けます。違うのは、資格取得年月日が雇用した日になることと、報酬月額がその人の賃金になることくらいです。合同会社の会社設立で一度手続きをしていれば、二度目はずいぶん楽に感じられるはずです。
扶養する家族がいる場合は、被扶養者(異動)届もあわせて提出します。配偶者が20歳以上60歳未満なら、国民年金第3号被保険者関係届も必要になります。
合同会社の会社設立の直後に人を雇う場合、新規適用届と資格取得届を同時に出すことになります。書類が多く見えますが、それぞれの様式は難しいものではありません。年金事務所の窓口で相談しながら進めれば確実です。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(一次情報):日本年金機構|2-1 従業員を採用したとき/日本年金機構
雇う前に整えておくものを、会社設立後の準備として解説

【ここでわかること】
労働条件通知書、就業規則、賃金台帳、労働者名簿。
手続きの前に、労働に関する基本的な書類を整えておく必要があります。届出の際に添付を求められることもあります。
| # | 内容 |
|---|---|
| 1 | 労働条件通知書。労働契約を結ぶときに、労働条件を明示する書面です。賃金、労働時間、休日、契約期間などを記載します。 |
| 2 | 労働者名簿。雇っている人の氏名、生年月日、住所、業務の種類などを記録します。 |
| 3 | 賃金台帳。支払った賃金の額や控除の内訳を記録します。 |
| 4 | 出勤簿またはタイムカード。労働時間を記録します。 |
| 5 | 就業規則。常時10人以上の労働者を使用する事業場では作成と届出が義務づけられています。それ未満でも作っておくと運用が安定します。 |
労働者名簿、賃金台帳、出勤簿は法定三帳簿と呼ばれ、備え付けと保存が求められます。ハローワークでの手続きの際に提示を求められることもあります。
書類の整備は、手続きのためだけにするものではありません。労働時間を記録していなければ残業代の計算ができませんし、賃金台帳がなければ源泉徴収の集計もできません。会社設立の直後は取引の記録を残す習慣づくりに追われますが、人を雇うとそこに労務の記録が加わります。仕組みとして回るようにしておいてください。
合同会社の会社設立をして初めて人を雇う場合、これらをゼロから作ることになります。厚生労働省のサイトに様式例が公開されているので、それをもとに整えるのが早い方法です。
労働条件は書面で渡す
口約束で人を雇うと、あとで条件の食い違いが起きます。労働条件通知書を作って渡すのは、法律上の義務でもあり、トラブルを避けるための実務でもあります。会社設立の直後で余裕がないときほど省略したくなりますが、ここは省かないでください。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(一次情報):厚生労働省|労働保険の成立手続/厚生労働省
雇用にともなう費用を、会社設立後の負担として解説する

【ここでわかること】
賃金だけではありません。保険料の会社負担分が乗ります。
人を雇うと、支払う賃金のほかに会社が負担する費用があります。予算を組むときは、この分も見込んでおいてください。
| 健康保険料の会社負担分 | 労使折半なので、保険料の半分を会社が負担します。 |
|---|---|
| 厚生年金保険料の会社負担分 | こちらも労使折半です。 |
| 子ども・子育て拠出金 | 会社が全額を負担します。厚生年金保険の標準報酬月額をもとに計算されます。 |
| 労災保険料 | 全額が会社の負担です。事業の種類によって料率が決まっています。 |
| 雇用保険料の会社負担分 | 会社と労働者の双方が負担します。会社のほうが割合が大きくなっています。 |
これらを合計すると、賃金の額に対して一定の割合が上乗せされることになります。合同会社の会社設立の直後に人を雇う場合、この上乗せ分を見込まずに予算を組むと資金繰りが苦しくなります。
また、賃金は毎月支払う固定費です。売上が変動しても、支払いは待ってくれません。雇うかどうかを決めるときは、最低でも数か月分の人件費を用意できるかを確認してください。
採用にかかる費用も見込んでおいてください。求人媒体への掲載料、面接にかける時間、入社後の教育。会社設立の直後は一人あたりの負担が大きく感じられます。人を雇うという判断は、賃金の額だけでなく、こうした周辺の費用まで含めて考えるものです。
外注という選択肢もあります。業務を委託する形なら、社会保険や労働保険の対象になりません。ただし、実態として雇用と変わらない働かせ方をしていると、労働者と判断されることがあります。形式だけを変えて負担を避けようとするのは避けてください。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(解説):経営サポートプラスアルファ|合同会社でも社会保険は必須/経営サポートプラスアルファ
社会保険労務士に頼むかどうかを解説する

【ここでわかること】
人数が増えたら検討する価値があります。
労働保険と社会保険の手続きは、社会保険労務士に依頼できます。人を雇う数が増えてきたら検討する価値があります。
一人だけの合同会社であれば、年に一度の算定基礎届くらいしか手続きがありません。自分でやっても負担は小さいでしょう。しかし人を雇うと、採用のたび、退職のたびに届出が発生します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 自分でやる | 費用がかかりません。人数が少ないうちは十分に回ります。電子申請を使えば窓口へ行く手間も減ります。 |
| スポットで頼む | 新規適用や初めての採用など、必要な場面だけ依頼する形です。 |
| 顧問契約を結ぶ | 手続き全般を任せる形です。就業規則の整備や労務相談も含められます。 |
判断の目安としては、手続きにかかる時間を自分の時給で換算してみることです。調べながら書類を作って窓口へ行く時間が、依頼する費用を上回るなら任せたほうが合理的です。
また、労務のトラブルは金額が大きくなりやすい分野です。残業代の計算、就業規則の内容、解雇の手続き。判断を誤ると、あとで大きな負担になります。人を雇う段階になったら、一度は専門家に相談しておくと安心です。
社会保険労務士を探すときは、会社設立の支援を扱っている事務所から当たると話が早いことがあります。税理士や司法書士と連携している事務所も多く、まとめて相談できる場合があります。合同会社であることを理由に断られることはまずありませんが、扱いに慣れているかどうかは事務所によって違うので、初回の相談で聞いてみてください。
合同会社の会社設立をしたばかりで、当面は一人でやるつもりなら、いまは自分で手続きすれば足ります。人を雇う予定が見えてきた時点で、社会保険労務士を探しはじめるくらいの順番でよいでしょう。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(解説):社労士クラウド|合同会社が従業員を雇ったら必要になる手続き/社労士クラウド
まとめ|合同会社が人を雇うときの手続きを整理する

【ここでわかること】
労基署とハローワークが加わります。順番があります。
この解説の内容をまとめます。
| # | 内容 |
|---|---|
| 1 | 人を雇うと、労働基準監督署とハローワークの手続きが加わります。会社設立時は年金事務所だけでした。 |
| 2 | 労災保険は、労働者を一人でも雇えば適用されます。保険料は全額が会社の負担です。 |
| 3 | 保険関係成立届は、成立の日から10日以内に労働基準監督署へ提出します。 |
| 4 | 雇用保険適用事業所設置届は、設置の翌日から起算して10日以内にハローワークへ提出します。 |
| 5 | 健康保険と厚生年金の資格取得届は、雇用した日から5日以内に年金事務所へ提出します。 |
| 6 | 手続きの順番は、労働基準監督署が先、ハローワークが後です。労働保険番号が必要になるためです。 |
| 7 | 代表社員自身は労災保険にも雇用保険にも原則として入れません。事業主であって労働者ではないためです。 |
合同会社の会社設立から人を雇う段階に進むと、手続きの量が一段増えます。最初の一人のときに要領をつかんでおけば、二人目以降は流れ作業になります。分からないことは各窓口で聞けば教えてもらえるので、迷ったまま止まらないでください。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(一次情報):厚生労働省|労働保険の成立手続/厚生労働省
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掲載順は優劣ではありません。順位づけではないので、気になる見出しのものから見てください。合同会社の会社設立の理解が進みます。
【最後に】
人を一人雇うだけで、手続きの窓口が2つ増えます。年金事務所に加えて、労働基準監督署とハローワーク。それぞれ様式も期限も違います。最初の一人のときは手間に感じますが、一度やれば要領がつかめます。件数が増えて手に負えなくなったら、社会保険労務士に任せるという選択もあります。まずは雇う前に、必要な手続きを一覧にしておいてください。
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