夫婦・家族で合同会社をつくる。複数人での会社設立を解説
合同会社commit 合同会社FIELD共同編集部が編集しています。合同会社FIELDの関連会社である会計事務所および税理士法人と内容を確認しながら執筆しました。金額や期限は執筆時点のものです。

この解説は、夫婦や家族で合同会社をつくろうとしている人に向けています。一人でつくる場合とは、決めることも書類も変わります。しかも身内だからこそ、あとで話がこじれると厄介です。ここでは会社設立の手続きの違いに加えて、最初に話し合っておくべきことも書きました。二人以上で会社をつくるすべての人に読んでもらえる内容です。
夫婦や家族で会社設立をするときに決めることを解説する

【ここでわかること】
出資、業務、代表、配分。この4つを最初に決めます。
夫婦や家族で合同会社をつくる場合、一人でつくるときには考えなくてよかったことを決める必要があります。
合同会社の「社員」は出資者を指します。夫婦二人で出資すれば社員は二人、親子三人で出資すれば社員は三人です。この人数によって、決めることが増えていきます。
| 誰がいくら出資するか | 出資の額は定款に書きます。折半にするのか、一方が多く出すのか。ここが後の配分にも影響します。 |
|---|---|
| 誰が業務を執行するか | 定款で定めなければ社員全員が業務執行社員になります。実際に手を動かす人だけに絞ることもできます。 |
| 誰が代表社員になるか | 定めなければ業務執行社員の全員が代表になります。一人に絞っておくほうが実務は動かしやすくなります。 |
| 利益をどう配分するか | 合同会社では、出資の割合と違う配分を定款で定められます。ここが株式会社との大きな違いです。 |
一人で会社設立をする場合は、この4つを考える必要がありませんでした。出資も業務も代表も配分も、すべて自分ひとりだからです。複数人になった途端に決めることが増えるのは、そのためです。合同会社の会社設立の準備で時間がかかるのは書類ではなく、この話し合いの部分になります。
この4つを決めないまま会社設立の手続きに入ると、定款が書けません。逆に言えば、ここさえ決まれば書類の作成は淡々と進みます。
身内だからこそ最初に決める
家族なら話せば分かる、と思って決めごとを省略する人がいます。しかし会社は何年も続くものです。事業が伸びたとき、誰かが抜けたいと言い出したとき、相続が起きたとき。そのときに「決めていなかった」という状態は、家族の関係そのものを損なうことがあります。合同会社の会社設立の段階で話し合っておいてください。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(解説):ベンチャーサポート|合同会社はひとりで設立できる/ベンチャーサポート税理士法人
出資の割合をどう決めるかを、会社設立の実務から解説

【ここでわかること】
金額だけでなく、その後の関係にも影響します。
誰がいくら出すかは、単なるお金の話ではありません。合同会社では出資者が社員となり、原則として全員の同意で重要事項を決めることになるからです。
株式会社では、持っている株式の数によって議決権が変わります。合同会社は違います。出資額の多い少ないにかかわらず、社員は一人一議決権が原則です。つまり、100万円出した人も10万円出した人も、定款の変更に対する発言力は同じということです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 折半にする | 夫婦で対等に運営したい場合の形です。ただし意見が割れると決まらなくなります。 |
| 一方が多く出す | 資金を出せる人が多く出す形です。ただし議決権が変わるわけではないので、決め方は別に定めておく必要があります。 |
| 片方だけが出資する | 一方が社員、もう一方は従業員という形です。社員は一人になるので、決議の問題は起きません。 |
| 定款で決議の方法を定める | 重要事項の決め方を定款で定めることができます。人数が増えるなら検討してください。 |
資本金の総額は、運転資金から逆算します。夫婦でも家族でも、この考え方は変わりません。固定費と初期投資を洗い出し、最初の入金までの期間をかけて計算します。
なお、資本金1000万円以上で会社設立をすると、設立1期目から消費税の課税事業者になります。家族で出し合って総額が大きくなる場合は、この点を確認してください。
払い込みは、それぞれが自分の名義で振り込むようにします。一人がまとめて振り込むと、誰が出資したのか記録から分かりません。合同会社の会社設立では、定款に書いた出資者と通帳の振込人が一致していることが望ましい形です。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(解説):マネーフォワード クラウド会社設立|合同会社の資本金はいくら必要?/株式会社マネーフォワード
代表社員と業務執行社員をどう決めるかを解説する

【ここでわかること】
定めないと全員が代表になります。一人に絞るのが実務的です。
合同会社では、定款に定めがなければ社員全員が業務を執行し、その全員が会社を代表します。夫婦二人なら二人とも代表社員になるということです。
全員が代表社員になると、登記簿には全員の氏名と住所が載ります。契約の場面でも誰が押印するのかが曖昧になります。実務上は、一人に絞っておくほうが動かしやすくなります。
| # | やること | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 業務執行社員を定める | 実際に業務を行う人を定款で指定します。出資はするが業務には関わらない人がいる場合に有効です。 |
| 2 | 代表社員を定める | 対外的に会社を代表する人を一人に絞ります。定款で直接定めるか、社員の互選で決めます。 |
| 3 | 印鑑証明書の通数が変わる | 代表社員が複数いれば、登記に添付する印鑑証明書も人数分必要になります。 |
| 4 | 登記される内容が変わる | 代表社員は氏名と住所が登記されます。住所を公開したくない人がいる場合は考慮が必要です。 |
代表社員を一人に絞ると、その人の印鑑証明書だけで会社設立の登記ができます。書類も減り、手続きが軽くなります。夫婦で会社をつくる場合、どちらが代表になるかを決めておくとよいでしょう。
代表社員の住所は公開される
代表社員の氏名と住所は登記され、登記事項証明書を取れば誰でも見られます。自宅を本店にして、夫婦二人とも代表社員にすると、二人分の住所が公開されることになります。会社設立の前に、この点を確認しておいてください。
業務執行社員を限定することにも意味があります。全員が業務執行社員だと、日常の判断にも全員が関わる建前になります。実際に事業を回している人だけに絞っておけば、動きが速くなります。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(解説):freee|合同会社の定款の作成方法は?/フリー株式会社
利益の配分を定款で決めることを、会社設立の視点から解説

【ここでわかること】
出資の割合と違う配分ができます。合同会社の特徴です。
合同会社の大きな特徴が、利益の配分を自由に決められる点です。株式会社では持株数に応じるのが基本ですが、合同会社は定款で別の定めを置けます。
家族で会社をつくる場合、この仕組みが役に立つ場面があります。たとえば、資金は一方が多く出したが、実際の業務はもう一方が担っているというケースです。出資の割合をそのまま配分に反映すると、実態と合わなくなります。

| # | 定款で定めない場合 | 定款で定める場合 |
|---|---|---|
| 1 | 出資の割合に応じて配分 | 割合を自由に設定できる |
| 2 | 分かりやすい | 貢献の度合いを反映できる |
| 3 | 実態と合わないことがある | 変更には全員の同意が必要 |
※金額と期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。最新の取扱いは所管官庁でご確認ください。
ただし、配分を自由にできるからといって、何でも通るわけではありません。実態を伴わない配分は、税務上の問題になり得ます。実際の業務の分担や貢献に見合った形にしてください。
また、配分の定めを変えるには社員全員の同意が必要です。会社設立のときに決めた内容が、その後も長く効いてきます。関係が良好なうちに、納得のいく形にしておいてください。
なお、社員に対する報酬は、役員報酬として支払うこともできます。配分と報酬は別の話なので、混同しないようにしてください。役員報酬は原則として期の途中で変えられず、社会保険料の計算のもとにもなります。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(解説):HT税理士法人|合同会社のメリット7つを徹底深掘り/HT税理士法人
家族を社員にするか従業員にするかを解説する

【ここでわかること】
出資するなら社員、給与をもらうなら従業員。扱いが違います。
家族に会社に関わってもらう形は、大きく2つあります。出資して社員になる形と、雇われて従業員になる形です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 社員(出資者)にする | 出資して合同会社の社員になります。定款に氏名と住所、出資額が書かれます。重要事項の決定に関わります。 |
| 業務執行社員にする | 社員のうち、実際に業務を行う人です。役員報酬を受け取る形になります。 |
| 従業員として雇う | 労働契約を結んで給与を支払います。社員ではないので、定款には出てきません。労働保険の対象になります。 |
| 何もしない | 会社に関わらない形です。家族だからといって、必ず関わらなければならないわけではありません。 |
社員にすると、その人も重要事項の決定に関わることになります。定款の変更には全員の同意が必要なので、人数が増えるほど動きにくくなります。事業に関わらない家族を安易に社員にすると、あとで身動きが取れなくなることがあります。
従業員として雇う場合は、労働保険と社会保険の手続きが必要になります。労働基準監督署、ハローワーク、年金事務所。窓口が増えます。ただし決議には関わらないので、会社の運営は単純なままです。
どちらの形にするかは、その人が事業にどう関わるかで決めてください。経営の判断に加わってほしいなら社員、決まったことを実行してもらうなら従業員。会社設立の時点で立場をはっきりさせておくと、後から役割で揉めることが減ります。曖昧なまま始めると、権限と責任の所在が分からなくなります。
税務上の扱いも変わります。社員に対する役員報酬には、損金算入の要件があります。従業員への給与は原則として損金になりますが、家族に対する不相当に高額な給与は否認されることがあります。合同会社の会社設立の段階で、税理士に相談しておくと安心です。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(解説):弥生|合同会社設立後は社会保険への加入義務がある/弥生株式会社
複数人だから起きる問題を、会社設立の前に知っておく

【ここでわかること】
全員一致の原則が足かせになることがあります。
合同会社では、定款の変更をはじめとする重要事項は、原則として社員全員の同意が必要です。人数が増えると、これが問題になることがあります。
株式会社なら、過半数や3分の2以上といった枠が用意されています。合同会社にはそれがないので、誰か一人が反対しただけで何も決まらなくなります。しかも、その状態を抜け出す方法も定款に書いていなければ存在しません。
| # | 内容 |
|---|---|
| 1 | 夫婦で意見が割れて、定款の変更ができなくなる。 |
| 2 | 一方が事業から離れたいと言い出したが、持分の扱いを決めていなかった。 |
| 3 | 離婚することになったが、会社の持分をどうするかで揉める。 |
| 4 | 社員の一人が亡くなり、持分の扱いが問題になる。 |
| 5 | 業務の分担が偏ってきたが、配分を変えるには全員の同意が要る。 |
これらはいずれも、会社設立の段階で定款に書いておけば避けられる、あるいは扱いを決めておける事柄です。起きてから話し合うより、起きる前に決めておくほうがはるかに楽です。
定款の変更にも全員の同意が要る
あとから決め方を変えようとしても、そのためには定款を変更する必要があり、それにも全員の同意が要ります。関係が悪化してからでは手遅れになります。合同会社の会社設立のときに、決めごとを整理しておいてください。

| # | 確認すること | 補足 |
|---|---|---|
| 1 | 業務執行社員を誰にするか | 実際に業務を行う人に絞る |
| 2 | 代表社員を誰にするか | 一人に絞ると書類も実務も軽くなる |
| 3 | 重要事項の決め方 | 全員一致以外の方法を定められる |
| 4 | 持分の譲渡のルール | 誰かが抜けるときの扱い |
| 5 | 社員の退社に関する定め | 退社の手続きと持分の払い戻し |
| 6 | 相続人が持分を承継する旨 | 社員が亡くなったときの扱い |
※金額と期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。最新の取扱いは所管官庁でご確認ください。
定款に書いておける内容としては、業務執行社員の定め、代表社員の定め、決議の方法、持分の譲渡のルール、社員の退社に関する定め、相続人が持分を承継する旨の定めなどがあります。司法書士に相談すると、自分たちの状況に合った条文を提案してもらえます。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(解説):佐野伸太郎税理士事務所|株式会社と合同会社のメリット・デメリット/佐野伸太郎税理士事務所
家族で会社をつくる場合の税務と社会保険を解説する

【ここでわかること】
役員報酬、扶養、社会保険。個人事業とは考え方が変わります。
家族で会社をつくると、税務と社会保険の扱いも変わります。個人事業のときとは考え方が違うので、整理しておきましょう。
役員報酬の扱い
業務執行社員に支払う報酬は役員報酬になります。原則として事業年度開始の日から3か月以内に決めて、その期は同じ額を払い続けます。金額が不相当に高額だと、損金にならない部分が出ることがあります。
社会保険の扱い
法人は人数にかかわらず強制適用です。役員報酬を受け取る社員は、健康保険と厚生年金の被保険者になります。夫婦二人とも報酬を受け取るなら、二人とも加入することになります。
一方を扶養に入れるという選択もあります。健康保険には被扶養者の制度があり、収入の要件を満たせば扶養に入れられます。ただし報酬を受け取っている場合は、その額によって判断されます。
配偶者控除などの扱い
個人の所得税では、配偶者の所得によって控除の扱いが変わります。役員報酬の額を決めるときは、この点も含めて考えることになります。合同会社の会社設立をして家族で運営する場合、報酬の設計は世帯全体で考えるのが合理的です。
家族で会社設立をする場合、世帯としての手取りをどう最大化するかという視点になりがちですが、それだけで決めると将来の年金額や、いざというときの給付が薄くなることがあります。報酬を抑えれば社会保険料は減りますが、そのぶん将来受け取るものも減ります。目先の負担だけでなく、長い目で見た設計にしてください。
こうした判断は、金額の組み合わせによって最適な形が変わります。会社設立の段階で税理士に一度相談して、いくつかのパターンで試算してもらうと判断しやすくなります。
| # | このセクションで扱うこと |
|---|---|
| 1 | 役員報酬の扱い |
| 2 | 社会保険の扱い |
| 3 | 配偶者控除などの扱い |
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(解説):経営サポートプラスアルファ|合同会社でも社会保険は必須/経営サポートプラスアルファ
まとめ|夫婦・家族での合同会社の会社設立

【ここでわかること】
決めごとを定款に落とす。関係が良好なうちに。
この解説の内容をまとめます。
| # | 内容 |
|---|---|
| 1 | 決めるのは、誰がいくら出資するか、誰が業務を執行するか、誰が代表するか、利益をどう配分するかの4つです。 |
| 2 | 合同会社では、出資額の多少にかかわらず社員は一人一議決権が原則です。株式会社とは違います。 |
| 3 | 代表社員を一人に絞ると、書類が減り、実務も動かしやすくなります。 |
| 4 | 利益の配分は定款で自由に定められます。ただし実態を伴わない配分は税務上の問題になり得ます。 |
| 5 | 家族を社員にするか従業員にするかで、扱いも手続きも変わります。 |
| 6 | 重要事項は原則として全員一致です。決め方を定款に書いておかないと動けなくなります。 |
| 7 | 役員報酬と社会保険、扶養の扱いは世帯全体で考えるのが合理的です。 |
夫婦や家族での会社設立は、一人の場合より決めることが増えます。しかしその決めごとこそが、あとの関係を守るものになります。合同会社の会社設立の手続きそのものは難しくありません。時間をかけるべきは、話し合いのほうです。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(解説):freee|合同会社の定款の作成方法は?/フリー株式会社
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【最後に】
身内で会社をつくると、話し合いを省略しがちです。分かっているつもりでも、数年後には認識がずれていることがあります。定款に書くという行為は、そのずれを防ぐための作業でもあります。面倒に感じても、会社設立の段階でひととおり話し合ってください。関係が良好なうちに決めておくのが、いちばん安く済むやり方です。
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