個人事業主から合同会社へ。法人成りのタイミングと会社設立の進め方を解説
合同会社commit 合同会社FIELD共同編集部が編集しています。合同会社FIELDの関連会社である会計事務所および税理士法人と内容を確認しながら執筆しました。金額や期限は執筆時点のものです。

この解説は、いま個人事業主として事業をしていて、そろそろ法人にしたほうがよいのではと考えはじめた人に向けています。売上が伸びてきた、取引先から法人を求められた、社会保険をどうにかしたい。きっかけはさまざまですが、いずれの場合も判断の材料は共通しています。会社設立そのものの手順よりも、切り替える時期と引き継ぎの段取りに重点を置いて書きました。
法人成りとは何か。個人事業と合同会社の違いを解説する

【ここでわかること】
事業の主体が個人から会社に変わります。税も保険も契約も、そこから変わります。
法人成りとは、個人事業主として営んできた事業を、新しく作った会社に引き継ぐことを指します。会社設立という手続き自体は、ゼロから起業する場合と変わりません。違うのは、すでに動いている事業をどう移すかという部分です。
個人事業と合同会社で決定的に違うのは、事業の主体が誰かという点です。個人事業では、売上も経費も財産もすべて事業主個人のものです。法人にすると、それらは会社のものになります。事業主は会社から役員報酬を受け取る立場になり、会社と個人は別の財布になります。

| # | 個人事業主 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 1 | 売上も財産も個人のもの | 売上も財産も会社のもの |
| 2 | 所得税(累進課税) | 法人税+役員報酬に所得税 |
| 3 | 国民健康保険と国民年金 | 健康保険と厚生年金に加入 |
| 4 | 確定申告を自分でできる規模 | 決算と法人税申告が必要 |
※金額と期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。最新の取扱いは所管官庁でご確認ください。
この違いが、そのまま法人成りのメリットとデメリットになります。会社設立を検討する段階では、税金の話だけが取り上げられがちですが、社会保険と事務負担の変化も同じくらい大きな要素です。
会社の形として合同会社を選ぶか株式会社を選ぶかは、法人成りの判断とは別の話です。法人成りをするかどうかを先に決めて、するなら次にどちらの形にするかを決める。この順番で考えると混乱しません。個人事業から移る場合、外部から資金を集める計画がないことが多いので、合同会社の会社設立を選ぶ人の割合は高くなります。設立の費用が軽く、作ったあとの維持も楽だからです。
個人事業を廃業するとは限らない
法人成りをしても、個人事業を必ずやめなければならないわけではありません。一部の事業だけを会社に移して、残りを個人で続けるという形も取れます。ただし取引先や税務の扱いが複雑になるので、分ける理由がはっきりしていない限りは、まとめて移すほうが管理は楽です。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(解説):freee|合同会社とは?特徴や設立するメリット・デメリット/フリー株式会社
いつ法人成りするか。会社設立を考える目安を解説する

【ここでわかること】
所得の水準、消費税、取引先の条件。判断の材料は3つあります。
「所得がいくらになったら法人にすべきか」という質問がよく出ますが、金額だけで決められるものではありません。判断の材料を3つに分けて見ていきます。
所得の水準で見る
個人の所得税は累進課税で、所得が増えるほど税率が上がります。法人税は資本金1億円以下の普通法人であれば一定の税率で、しかも軽減税率の適用があります。どこかの水準で法人のほうが有利になる領域に入りますが、その分岐点は経費の構成や家族への給与、役員報酬の取り方によって動きます。一般に語られる金額はあくまで目安で、自分の数字で計算しないと意味がありません。
消費税の扱いで見る
消費税には基準期間の課税売上高による判定があり、新しく作った法人には設立当初の扱いがあります。ただしインボイス制度の登録をしている場合は事情が変わりますし、資本金1000万円以上で会社設立をすると1期目から課税事業者になります。ここは制度が細かく、しかも改正が入りやすい領域なので、必ず国税庁の案内と税理士の確認を取ってください。
取引と信用で見る
税金以外の理由も無視できません。取引先が法人としか契約しない、法人向けの融資を受けたい、人を雇うので社会保険を整えたい。こうした事情があるなら、所得の水準にかかわらず会社設立を進める理由になります。
実際の相談で多いのは、税金を理由に迷っている人より、取引や信用を理由に急いでいる人です。継続的に発注してくれる相手から「法人でないと契約できない」と言われて動き出す、というパターンです。この場合、いつ法人成りするかは相手の都合で決まるので、こちらは会社設立の準備をどれだけ早く整えられるかという話になります。合同会社なら定款認証がないぶん、株式会社より短い日数で登記まで持っていけます。
逆に、急ぐ理由がないなら、事業年度の区切りに合わせるのが素直です。個人事業の所得は暦年で計算するので、年の途中で法人成りをすると、その年は個人と法人の両方で申告をすることになります。手間を減らしたいなら、年明けの切り替えを狙うという選び方もあります。会社設立の日をいつにするかは、こうした事務の都合からも決められます。

| 項目 | 数字 | 前提 |
|---|---|---|
| 資本金1000万円 | 1000万円 | 以上だと設立1期目から消費税の課税事業者 |
| 登録免許税 | 6万円 | 合同会社の設立登記の最低額 |
| 法人設立届出書 | 2か月 | 設立の日以後の提出期限 |
| 社会保険の届出 | 5日 | 事実発生から年金事務所へ |
※金額と期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。最新の取扱いは所管官庁でご確認ください。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(解説):小谷野税理士法人|サラリーマンが合同会社の設立で節税できる理由/小谷野税理士法人
法人成りのメリットを、合同会社の会社設立に即して解説する

【ここでわかること】
役員報酬、決算期の選択、社会保険、信用。器が変わることで増える選択肢です。
法人成りをすることで増える選択肢を並べます。合同会社で会社設立をした場合を前提に書いています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 役員報酬という形が使える | 会社から自分へ報酬を出し、それを会社の経費にできます。個人側では給与所得控除の対象になります。金額は原則として期の途中で変えられません。 |
| 決算期を自分で決められる | 個人事業は12月末で固定ですが、法人は事業年度を自由に決められます。繁忙期と決算作業が重ならないようにできます。 |
| 健康保険と厚生年金に入る | 国民健康保険と国民年金から切り替わります。保険料の負担は変わりますが、将来受け取る年金額や傷病手当金などの給付は手厚くなります。 |
| 有限責任になる | 会社の債務について、社員は出資額を超えて責任を負わないのが原則です。個人事業では事業の債務と個人の債務が分かれません。 |
| 法人名義で契約できる | 口座、賃貸借、リース、許認可。法人であることが前提の枠組みを使えるようになります。 |
| 家族への給与を出しやすい | 個人事業の専従者給与のような制約がなく、実態に応じた形で支払えます。実態がないのに払うのは当然に問題です。 |
このうち、会社設立の直後から実感しやすいのは役員報酬と決算期です。特に決算期は、会社設立のときに決めてしまうとあとから変えるのに手間がかかるので、繁忙期を避けて設定しておくとよいでしょう。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(解説):マネーフォワード クラウド会社設立|合同会社とは?/株式会社マネーフォワード
法人成りで増える負担。会社設立の前に知っておく

【ここでわかること】
社会保険料、決算の手間、赤字でもかかる税金。増えるものも確認します。
良い面だけを見て会社設立をすると、後で資金繰りに詰まります。増える負担も並べておきます。
| # | やること | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 社会保険料の会社負担が発生する | 健康保険と厚生年金の保険料は、会社と個人で折半します。代表社員が自分ひとりでも、会社側の負担分は会社のお金から出ていきます。 |
| 2 | 赤字でも法人住民税の均等割がかかる | 所得がゼロでも、法人であるだけでかかる税金があります。金額は自治体と資本金の額によります。 |
| 3 | 決算と法人税申告が必要になる | 個人の確定申告より書類が増えます。自分でやることもできますが、税理士に依頼する人が多く、その顧問料が固定費になります。 |
| 4 | 会社のお金を自由に使えなくなる | 会社の口座から個人の生活費を出すことはできません。役員報酬という形で受け取り、そこから生活します。 |
| 5 | 会社設立の手続きと費用がかかる | 登録免許税をはじめとする実費と、書類を作る時間が必要です。合同会社なら株式会社より軽く済みます。 |
社会保険料を見落とすと資金繰りが苦しくなる
法人成りの相談でいちばん多い誤算が社会保険です。法人は人数にかかわらず強制適用で、代表社員が一人だけでも加入します。報酬額に応じた保険料が毎月出ていき、その半分は会社の負担です。会社設立の前に、役員報酬をいくらに設定するとどれだけの保険料になるかを一度計算してみてください。日本年金機構の保険料額表で確認できます。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(解説):弥生|合同会社設立後は社会保険への加入義務がある/弥生株式会社
事業をどう引き継ぐか。会社設立後にやることを解説する

【ここでわかること】
契約、資産、許認可、口座。移すものごとに段取りが違います。
会社設立の登記が終わったら、個人でやっていたものを会社に移していきます。ここが法人成り特有の作業です。
| 取引先との契約 | 契約の名義を個人から法人へ変えます。相手方の同意が必要なので、会社設立の前から声をかけておくと切り替えが早く進みます。 |
|---|---|
| 事業用の資産 | 車両、機材、在庫などを会社へ引き継ぎます。売買、現物出資、賃貸のいずれかの形になり、税務の扱いがそれぞれ違います。金額が大きいものは税理士に相談してください。 |
| 許認可 | 個人で取った許認可は、原則として法人には引き継げません。法人として取り直しになります。取り直しに時間がかかる業種は、そこから逆算して会社設立の日を決めます。 |
| 銀行口座 | 法人口座を新しく開きます。個人の口座をそのまま使うことはできません。開設には審査があり、時間がかかることを見込んでおいてください。 |
| 従業員 | 個人事業で雇っていた人は、いったん退職して法人で採用し直す形になります。社会保険と雇用保険の手続きが伴います。 |
| 個人事業の廃業届 | 個人としての事業をやめる場合、税務署へ廃業届を出します。青色申告をしていた場合は取りやめの届出も必要です。 |
資産の引き継ぎは、金額が大きくなるほど慎重に扱う必要があります。個人が持っていた機材や車両を会社へ売る形にすると、個人側では譲渡所得の対象になり得ますし、会社側では取得価額をもとに減価償却を計算し直すことになります。在庫を移す場合も、棚卸資産の譲渡として扱われます。会社設立の前後でこの整理を怠ると、あとで修正が必要になって余計な手間がかかります。金額が大きいものが一つでもあるなら、税理士に見てもらってから動かしてください。
許認可の取り直しは、法人成りでいちばん時間が読みにくい部分です。建設業、産業廃棄物、飲食店、古物商など、業種によって手続きも期間もまったく違います。会社設立の日程を決める前に、所管の窓口へ問い合わせておくのが確実です。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(解説):tax-startup|合同会社設立の流れは?必要な書類や設立後にやること/税理士法人スタートアップ
合同会社で法人成りする場合の手続きの流れ

【ここでわかること】
会社設立の準備と、個人事業の締めくくりを並行して進めます。
法人成りの場合、会社設立の手続きと、個人事業を締める手続きが並行します。順番を間違えると空白期間ができるので、時系列で押さえておきましょう。

| # | 工程 | 内容 | 目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 切り替える日を決める | 事業年度と決算期もここで決める | 早めに |
| 2 | 会社の基本事項を決める | 商号・本店・事業目的・資本金・社員構成 | 2〜5日 |
| 3 | 定款を作り、出資金を払い込む | 合同会社は定款認証が不要 | 2〜4日 |
| 4 | 法務局へ設立登記を申請 | 申請日が会社の設立日になる | 1日 |
| 5 | 登記完了・証明書を取得 | 法人口座の開設に必要 | 3〜10日 |
| 6 | 税務署などへ届出 | 法人設立届出書は設立から2か月以内 | 順次 |
| 7 | 個人事業の廃業届を出す | 青色申告の取りやめ届も忘れずに | 順次 |
| 8 | 契約と資産を会社へ移す | 相手方の同意が必要なものから | 順次 |
※金額と期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。最新の取扱いは所管官庁でご確認ください。
会社設立の日は、登記を申請した日になります。切りのよい日にしたい場合は、その日に窓口へ持ち込むかオンラインで送信することになります。法務局が閉まっている日は申請できないので、月初や年初を狙うときは曜日を確認しておいてください。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(解説):弥生|合同会社設立の流れは?/弥生株式会社
法人成りでよくあるつまずきと、その避け方を解説する

【ここでわかること】
口座が開かない、許認可が間に合わない、報酬額を決め損ねる。
実際に法人成りをした人がつまずきやすいところを挙げます。どれも事前に手を打てば避けられます。
| # | 内容 |
|---|---|
| 1 | 法人口座がすぐに開かない。会社設立の直後は実績がないため、審査に時間がかかったり断られたりします。事業の内容を説明できる資料を用意し、複数の金融機関に当たるつもりでいてください。 |
| 2 | 許認可の取り直しが間に合わない。個人で取った許認可は法人に引き継げないのが原則です。取り直しの期間を見ずに会社設立の日を決めると、営業できない空白ができます。 |
| 3 | 役員報酬の額を決め損ねる。役員報酬は原則として期の途中で変更できません。会社設立から3か月以内に決めて、そのあと1年間はその額で通すことになります。生活費と社会保険料の両方を見て決めてください。 |
| 4 | 会社と個人のお金が混ざる。個人事業の感覚のまま会社の口座から生活費を出すと、あとで整理がつかなくなります。会社設立と同時に、財布を分ける習慣に切り替えます。 |
| 5 | 本店所在地を安易に決める。自宅を本店にすると住所が登記されて公開されます。あとから変えるには変更登記と登録免許税がかかります。 |
| 6 | 消費税の判定を確認していない。資本金の額やインボイス登録の有無で扱いが変わります。会社設立の前に税理士へ確認してください。 |
役員報酬は会社設立から3か月以内に決める
役員報酬は、原則として事業年度開始の日から3か月以内に決めて、その事業年度中は同じ額を払い続けます。会社設立の直後は売上の見通しが立てにくく、決めるのが難しい時期ですが、後から自由に動かせないという前提で考えてください。低く設定しすぎると生活が回らず、高くしすぎると社会保険料が重くなります。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(解説):サン共同税理士法人|会社設立後すぐに銀行口座開設ができる7つのポイント/サン共同税理士法人
まとめ|個人事業主が合同会社で会社設立をするときの要点

【ここでわかること】
切り替える日を決めて、そこから逆算する。これが基本です。
この解説で扱った内容をまとめます。
| # | 内容 |
|---|---|
| 1 | 法人成りとは、個人事業を新しく作った会社に引き継ぐこと。事業の主体が個人から会社に変わります。 |
| 2 | 判断の材料は、所得の水準・消費税の扱い・取引や信用の3つ。金額だけで決まるものではありません。 |
| 3 | 得られるのは、役員報酬・決算期の選択・厚生年金と健康保険・有限責任・法人名義の契約です。 |
| 4 | 増えるのは、社会保険料の会社負担・赤字でもかかる均等割・決算と申告の手間です。 |
| 5 | 会社設立の登記が終わったら、契約・資産・許認可・口座・従業員を順に移していきます。 |
| 6 | 許認可の取り直しと法人口座の開設は時間が読みにくいので、そこから逆算して日程を組みます。 |
| 7 | 役員報酬は会社設立から3か月以内に決めて、その期は動かさないのが原則です。 |
合同会社での会社設立は、株式会社に比べて費用も手間も軽く済みます。法人成りのように、事業の引き継ぎ作業が別に発生する場面では、設立そのものが軽いことが助けになります。手続きの細部は、流れ・費用・定款・登記の各カテゴリーで解説していますので、進む段階に合わせて読んでください。
※金額・期限は執筆時点(2026年8月)の制度にもとづく目安です。
出典(一次情報):J-Net21(中小機構)|合同会社の設立手続き/独立行政法人中小企業基盤整備機構
他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください
順番は優劣ではありません。会社設立の進み具合によって役立つページは変わるため、いまの段階に近いものから読むのがおすすめです。
【最後に】
法人成りは、事業の中身が変わるわけではありません。同じ仕事を、個人ではなく会社という器でやるようになるだけです。ただし器が変わると、税金の計算も、社会保険も、契約の名義も変わります。会社設立を決めたら、切り替えの日を決めて、そこから逆算して段取りを組んでください。判断が微妙なところは、顧問の税理士がいれば必ず相談を。いなければ、この機会に一度だけでも見てもらうと、あとの負担がだいぶ違います。
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